まんが家さんのmyfavorite スペシャルインタビュー 特別な一冊を教えていただきます!第1回安藤ゆき先生[前編]

プロフィール4月4日生まれ、大阪府出身。2004年デラックスマーガレットにて『星とハート』でデビュー。読み切り集『不思議なひと』(2009年)『透明人間の恋』(2013年)『昏倒少女』(2015年)をリリース。2015年より『町田くんの世界』を連載中。2歳の頃初めて描いた絵の記憶をモチーフにしたかわいらしい自画像。

「やっぱり美しいな、世界は。」

冷静にこの世界を俯瞰したような視点。それでいてとても温かい町田くんの言葉に、慰められ、許され、救われる…。
「このマンガがすごい!2016(宝島社)」オンナ編3位にランクイン、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞受賞と、急速に支持を集め、評価されている安藤ゆき先生の『町田くんの世界』。独自の芸術性でひとの強さとやさしさを描き出し、心の深いところにそっと届けてくれるその作品性は、いったいどこから…? 安藤先生の本棚にある大切なまんがをご紹介いただき、安藤先生の世界にお邪魔します。
大阪育ちの安藤先生は、とてもおしゃれでフレンドリー。とても真摯にインタビューに答えてくださいました。時々飛び出すチャーミングな大阪弁のイントネーションが印象的でした☆

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安藤先生のmyfavorite!『おばけたんご』くらもちふさこ7歳の頃、憧子(あこ)には、端午(たんご)という親が決めた婚約者がいた。端午が事故で亡くなり、以来、「端午さま お願い」とお願いすることが憧子のクセになっている。でも高校生になった憧子が“端午さま”にお願いできないことがある。それは、その事故で生き残り、端午の代わりに婚約者になった陸朗(りくろう)のこと…。

『まんが家・安藤ゆき』のルーツ

“私が主人公になった”衝撃の作品

──今回特別な一作としてこの作品を選ばれた理由を聞かせてください。

少女まんがを描くきっかけだったなと思って選びました。

──いつ頃読まれましたか? くらもちふさこ先生のほかの作品とは何が違ったのでしょうか?

「18・19歳かな…くらもち先生の作品をたくさん読んだのは高校生の頃だから、高校の時かもしれないです。 この作品はヒーローがヒロイン以外に惹かれていくのが衝撃的だったんです。たいていの少女まんがはヒーローがヒロインを好きになってくれるのに、ほかの女の子の影がどんどん濃くなってきて、「取られちゃう!」みたいな。それがすごくリアルで、ドキドキしてる中でラストの展開…。自分も同じ気持ちになって入り込んだし、本当に心が動いた感じでした。
その時に、「少女まんがってこんなにおもしろいんだ!じゃあ、少女まんがを描こう!」って思ったんです。」

──安藤先生の作品から想像して、「こんな描き方もあるのか」というふうに客観的にまんがを読むのかな、と思ったりしていました。

「そうですね、たぶんどのまんがを読んでもちょっと引いて見てるっていうか、あんまり作品に入り込んだりしないですね。『おばけたんご』も、途中まではいつも通り外から読んでたと思うんですよ。でも、どんどんライバルの女の子の存在が大きくなって、私も「どうしよ、どうしよ」って気分になって。」

──その時に恋をしていたから、より共感してしまったということは…?

「それはないです。主人公が私になったんじゃなくて、私が主人公になったわけだから。私が主人公と一緒にヒーローのことが気になって、「取られたらどうしよう」って一緒に思って。それが初めてだったし、今も好きなまんがはいろいろあるけど、ここまで入り込めるまんがはほかにないので…。
読んだ時は、「ラストを最初から計画してたとしたらすごい」って。こんなに作り込めるならおもしろいなと思ったんです。でも、くらもち先生が何かのインタビューで「展開を決めずに描いていた」って話していたような気がして。くらもち先生も世界に入りながら描いたのかな?と思ったりしつつ、有機的に作っているとしたら、それはそれで衝撃というか…」

──安藤先生の作品の静かな世界観が、くらもち先生の作品性と通じるようにも思います。

「本当ですか? それなら嬉しいです。」

──言葉であまり語りすぎていなように感じるのですが、それは意識なさってますか?

「やっぱり、できるだけセリフとモノローグは少ないほうがいいと思ってますね。言葉にならないものを伝えたいと思うし、私はそれが創作物の使命と思っているから…。」

現在はご実家の本棚に大切に保管。20歳くらいの頃に“まんが部屋”ができ、持っていたコミックを収納してみたら3~4面の本棚が埋まるほどだったとか。

“好きなものがいっぱいまんがはずっとその中にある

──『おばけたんご』以前は、どのくらいまんがを読まれていたのでしょうか?

「小さい頃からまんがは好きで、小学校の時から姉が買っていた『りぼん』を読んでいましたね。でも、少女まんがが大好きだった記憶はなくて。藤子・F・不二雄先生、高橋留美子先生、楠桂先生などの好きな作品を単行本で読んでました。 中学生になってファッションとかに興味が移って、「あ、こうやってまんがファンを卒業していくんだな」と思ってました。でも、ファッション誌に載っていた広告を見て「すっごくおしゃれでかわいいから読んでみたい!」と思った岡崎京子先生をまた読み始めて。姉の影響で手塚治虫先生とか、あだち充先生、くらもちふさこ先生、かわかみじゅんこ先生、川原泉先生…ホラーやコメディも読んだし、ジャンルもいろいろです。」

──まんがを卒業しかけたとは、意外です。

「たぶん若くてエネルギーが有り余ってたから「なんでも面白い!」みたいな感じで。高校生の頃はファッションも好きだったし、友達と遊ぶのも楽しかったし。一方でまんがも読んでるから友達に貸したりもして。ドラマや映画もよく見てたな…学校帰りに好きな映画を1人で観に行ったりしてました。」

──映画も小さい頃からよく観ていたんですか?

「観てましたね。レンタルしてきて母と姉と一緒にとか。…あ、最初は『風の谷のナウシカ』でした。幼稚園の頃に親が録画してくれたのを見て、ずっとめちゃくちゃ好きだった! 忘れられない…まんがを読む前からだから、『ナウシカ』が自分のいろんなルーツかもしれないです。 …でも、その『ナウシカ』の録画、途中で切れてたんですよ。(笑)それを繰り返し、繰り返し見てて。」

担当編集者:え!? ラストがわからないって、罰ゲームのようじゃないですか。(笑)

「子供って、途中で終わってるとかはわからないもので。自分の中ではそこまでで終わってるというか。でも、大好きで。王蟲(オーム)の光ってる目のインパクトとか、「あんなもん(*注)で空を飛んでる!」とか。イスをひっくり返して、マネしてました。(笑)」

*注:『風の谷のナウシカ』に登場する1人乗りの小型飛行機。翼の上に立つような形状。

インタビュー当日もさりげなくスタイリッシュな装いの安藤先生。履いていたシルバーのスニーカーは履きつぶしてはリピートしているお気に入り。

  • 伸びやかに感性を育んだ少女は、その後…!?次のページでは、安藤先生の独特な視点の秘密が明らかに !